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微生物や細胞のはたらきを知り、その機能を産業的に応用することを目指しています。

研究内容HEADLINE

4.乳酸菌の共生および接着現象の解明と応用

(1) 乳酸菌と酵母の共生
 乳酸菌と酵母は人類に最もなじみ深い微生物であり、世界中の発酵食品で利用されている。一部の微生物管理が行き届いた製品(例えばビールやヨーグルト)を除けば、ほとんどの発酵食品には乳酸菌と酵母が共存している。乳酸菌は、糖やデンプンをはじめとする多糖から乳酸を生産することによってエネルギーを獲得するが、蓄積した乳酸は自身の生育や物質生産を阻害してしまう。これに対して酵母の多くはデンプンなどの多糖を資化することができないが、好気条件下では乳酸を資化することができる。つまり、乳酸菌にとって、酵母は老廃物である乳酸を除去してくれるパートナーであり、酵母にとって、乳酸菌は自分が資化できない多糖を乳酸に変換してくれるパートナーと考えることができる。

(2) 乳酸菌は酵母や炭水化物に接着する
 このような観点から、乳酸菌によるケフィラン(免疫賦活効果や保湿剤に利用できる多糖)の生産において、パン酵母と共培養を行い、乳酸の蓄積を抑制したところ、ケフィラン生産性を2倍以上に向上させることができた()。この研究の過程で、乳酸菌の多糖生産性は酵母との物理的な接触によっても促進されることを見いだした()。パン酵母の表層はマンナンに覆われていることから、乳酸菌側は表層のタンパク質で酵母のマンナンと相互作用しているという作業仮説を立て、乳酸菌表層のタンパク質を可溶化し、マンナンタンパク質をリガンドとしてアフィニティ精製し、同定した(図)。すると、意外なことに、分子シャペロンDnaKGroELや解糖系の酵素GAPDHなど、本来は細胞質に局在するタンパク質が乳酸菌の表層に輸送され、酵母との接着タンパク質として機能していることがわかった。
 これらのタンパク質が他の細胞との接着タンパク質として機能していることは、様々な微生物で報告されており、乳酸菌、大腸菌、ピロリ菌などのヒト消化管への定着や、病原菌のヒト表皮細胞への感染などに関与することが報告されている。

(3) 現在の研究 −接着メカニズムの解明とプロバイオティクスへの応用−
 DnaKについて詳細に検討したところ、DnaKは酵母、乳酸菌、マンナンの他に、腸管のムチン、セルロース、キチンなどにも結合することがわかってきた。これは、乳酸菌などの善玉細菌の腸管への定着を議論する場合、腸管上皮細胞への接着だけでなく、食物繊維との相互作用も考慮しなければならないことを意味している。現在、これらの接着タンパク質の性質をさらに詳細に検討するとともに、プロバイオティクスに応用する方法を検討している。
(プロバイオティクス:人体に良い影響を与える微生物。または、それらを含む製品、食品。)



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